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社説:高齢者の雇用 人材センターの拡充を

毎日新聞 2015年08月27日 

http://mainichi.jp/opinion/news/20150827k0000m070141000c.html

65歳を過ぎても働きたい。そう考える高齢者が増える中、雇用環境をどう整備していくのか。

 

 厚生労働省の検討会が報告書をまとめた。柱の一つは、全国にある公益法人で、高齢者に仕事を提供するシルバー人材センターの活用だ。

 報告書は、センターに登録して働く人について労働時間の上限を緩和することや業種の拡大を提案している。若い世代の雇用を奪わないよう配慮しつつ、国は高齢者の要望に応えていくべきだ。

 総務省の調査によると、65〜69歳のうち、仕事をしている人は約4割に上る。また65歳以上で、働きたくても職に就けない人は200万人を超えている。

 一方、原則60歳から登録できるシルバー人材センターの会員は約73万人に上るが、近年は減少傾向にある。企業で65歳までの雇用が進んできたことも影響しているとはいえ、センターが高齢者の要望に応え切れていない面もあるからだ。

 人材センターで紹介される仕事は厚労省の指導に基づき、掃除や家事の手伝いなど臨時で短期間のものが多い。現役世代の雇用への影響や民間業者との競合を避ける理由からだ。労働時間も原則週20時間、日数もひと月に10日までの上限がある。

 高齢者の雇用を進めたい自治体などから、こうした規制の緩和を国に求める声が上がっていた。

 このうち試験的に就業時間を延ばした埼玉県草加市の人材センターでは、登録者が週30時間、月に15日まで働けるようになった。市内の工場で荷造りの仕事をする男性(71)は月収が約6万円から約7万円に増えた。「元気なうちはもっと長い時間働きたい」と言う。

 同センターによると、登録者の平均年齢は71・6歳。年金だけでは生活が苦しい人が多い。就労希望者は今後さらに増えるとみている。若い世代の雇用への影響については「若者が希望しない分野の仕事が多く、あつれきはない」と説明する。

 就労拡大には規制緩和とともに人材センターの態勢強化が必要だ。ハローワークなどと連携を図りつつ、高齢者、雇用側双方の要望をかなえるマッチング機能の充実がとりわけ重要だ。

 厚労省検討会の報告書は、人手が不足している介護分野での高齢者の就労にも期待している。しかし、草加市の場合でも雇用条件などを理由に希望者は少ない。人材センターには、高齢者と介護現場をつなぐ努力をしてほしい。

 日本は高齢化が進む一方、十分な年金の確保も容易ではない。労働人口が減っていくことを考えれば、高齢者の就業機会を増やしていく大胆な政策を国に求めたい。