草加の官民が創業支援 女性が飲食店、初の成果 空き店舗を改修 野菜料理店に

草加の官民が創業支援 女性が飲食店、初の成果 空き店舗を改修 野菜料理店に

2017/5/11付

日本経済新聞 地域経済

 

    埼玉県草加市で、古い遊休不動産の活用で街を活性化する官民連携の取り組みが初の成果を生み出した。市が実施した起業塾で経営ノウハウを学んだ女性が3月末に、草加駅東口近くの空き店舗を改修して飲食店を開業。起業の動きを加速させようと金融機関も支援を強める。にぎわい創出につなげ、都心に近いベッドタウンが直面する市街地空洞化の克服をめざす。

 草加市は2015年度に、空き店舗を利用してビジネスや地域住民の交流、雇用を創出する、リノベーションまちづくり事業を始めた。空き店舗での起業志望者を集めた3日間の起業塾を開き、事業計画を審査し不動産所有者と引き合わせるのが主な内容だ。

 初開催の16年度は24人が参加。塾に参加した田中昴さん(35)が3月末、地域の農家から仕入れた野菜を中心にした大皿料理が売りの飲食店「野菜とお酒のバル スバル」の開業にこぎ着けた。同事業の第1号だ。

 起業塾では数人のグループで空き物件の活用方法を考え、物件所有者に提案した。田中さんは専門家の支援を受けながら事業計画を練り、日本政策金融公庫から創業資金として600万円の融資を確保。「起業塾を通じて飲食業以外にも多様な業種の専門家から意見をもらい、開業に役立っている」(田中さん)

 空き店舗は元すし店で、同じ飲食業だったため改修費用が抑えられたことも幸いした。1カ月で150万円売り上げるのが目標だ。

 草加市は東京に隣接したベッドタウンで人口流入が続く。その一方、買い物や飲食は都心などで済ませる人が多く、消費は市外に流出しがちだ。商店街は空き店舗が目立っており、さらなる空洞化を防ぐためのにぎわい創出が急務だ。

 空き店舗を活用した事業は、かつて宿場町として栄えた旧日光街道周辺に地域を絞った。狭い範囲で集中的に起業を促して、短期間で地域活性化につなげる。

 第1号店の誕生により、周辺への波及効果も期待する。別の起業塾参加者らも子育て中のクリエーター向けに、子連れでも仕事ができる場所を提供する事業を始める予定だ。

 市は日本政策金融公庫と連携し資金面でも支える。創業関連の融資を受けた起業家が1年分の返済を終えた場合、年間利息の半分を補助する。他の地域金融機関とも連携し、持続性のある市街地活性化策を進めていく。