<安保法成立>憲法改正が先…県内市長も懸念「国民理解なく採決」

2015年9月19日埼玉新聞

http://www.saitama-np.co.jp/news/2015/09/20/03.html

戦後の安全保障政策の一大転換となる安全保障関連法が成立した。国民の理解が十分に進まないままで、今国会での成立には多数が反対する。「違憲」との指摘も根強い安保法の先行きには、県内の市長も懸念を示した。

 さいたま市清水勇人市長は、安保法の成立を「いかなる事態でも国民の命と平和な暮らしが守られるよう、常日頃から隙のない備えをすることは国の最も重要な責務」と評価。その一方で「成立したら終わりではなく、なぜこの法律が必要なのか、どのように平和国家を堅持していくのか、今後も政府には法律の意義について説明に努めてほしい」と注文を付けた。

 今回の可決を「国会のルール上で行われた手続きであり、与党多数の前では致し方ない」とする深谷市の小島進市長は「問題の本質は国民が意見表明できるだけ(法律に対する)理解が深まったのか。与野党とも市民の中に入り、法案の中身を説明し尽くしたのか。国会議事堂とその周辺だけの議論で終始した感は否めない」とみる。

 和光市の松本武洋市長は「国際情勢が変わっていく中で何も変えないわけにはいかない」と安保法の必要性を認めつつも「憲法を改正せず解釈だけで乗り切ろうとするなど本当に大事な部分を議論しない。政治が相手にされなくなる」と苦言を呈した。

 「憲法の解釈を変更して合憲などと言うのは強引だ」と言うのは越谷市高橋努市長。「憲法は政治家を縛るもの。そうでなければ憲法の意味がない。安保関連法を作るなら憲法を変更してからにすべき」と主張する。反対デモは同市内でも行われている。高橋市長は「立場上行動はできないが、デモをする市民の気持ちも分かる」とも。

 与党は平和を守るため、戦争を未然に防ぐための法律と説明するが、蕨市の頼高英雄市長は「日本が攻撃を受けなくても海外で他国の戦闘に参加することになる。他国の戦争に巻き込まれる不安を多くの国民が感じ、私もその懸念を持っている」と心配する。

 17日の参院特別委での採決は混乱と怒号が飛び交い、国民には一体何が行われたのか分からなかった。川口市の奥ノ木信夫市長は「あの採決の仕方はみっともない。見苦しい様子が世界に放送されてしまったのは残念」と話す。

 安保法支持の立場だが「法案が国会を通った後でも(政府は)世論の理解を得られるまで説明を尽くすべき」と指摘。「米国が世界の警察ではなくなり、日本の平和への責任が問われているが国民の理解が深まっていないし、議論がかみ合っていない。原因は安全保障や憲法改正にふたをしてきたこと。封印を解いて議論を深める時だ」と語った。

国民の理解必要/上田清司知事の話

 国の安全保障政策は国民の理解と政府に対する信頼が不可欠である。わが国の安全保障の在り方について、国会での議論が収れんされず、国民の理解が十分に得られないまま採決に至ったことは遺憾。安全保障政策については、与野党の多くが一致し、多くの国民の支持を得られることが望ましい。政府には安全保障政策の必要性について、引き続き国民の理解が得られるよう丁寧に説明を続けてほしい。