「お互いさまのまちづくり」が人口減少社会を押しとどめる――。そんな信念を持って地域社会と医療現場の距離を近づけようと活動する看護師らが埼玉県草加市にいる。老若男女、誰でも駆け込んで来られるようにとグループ名は「みんなの保健室 陽(ひ)だまり」。健康とおしゃれを考えるファッションショーや昭和の歌コンサートなど、活動の幅は広い。

 代表は草加市在住の看護師服部満生子さん(73)。宮城県生まれで、都内や埼玉県内の医療施設に勤務。医療大学で看護教員をした経験を持つ。2015年に退職した後、経験を地域の活動につなげたいと考えた。東大公共政策大学院地域包括ケアシステムなど医療政策の研究も重ねた。並行して草加市立病院勤務時の元同僚らの協力を得てスタッフを集めた。

 そのさなか、服部さんに転機が訪れる。乳がんになった。全摘手術を受け、抗がん剤治療を始めた。自分が患者になって初めて、医療従事者と患者の意識のギャップを痛感した。「かつての私にはわからなかったことが見えてきた。気持ちが落ち込んだときに受けた近所の親身な声がけや手助けに励まされた」と服部さん。地域社会と結びつきを深めた「お互いさまのまちづくり」の必要性をあらためて感じた。

 ログイン前の続き活動の基本は講演会、勉強会だが、ミニコンサートやがん患者の体験談を聴く会など内容は多岐にわたる。16年4月から月1回、1カ所で始まり、徐々に増えて現在は4カ所で月8回になった。最初の会場は東武スカイツリーライン新田駅前の喫茶店「ツネ」だ。資金も場所もなく困っていたとき、店のオーナー大串好子さんが「使っていいわよ」と言ってくれた。

 7月末の催し「おしゃれして外に出よう」がツネで開かれ、有名スタイリストを呼んでおしゃれのアドバイスを受けた。参加者は28人。20代から80代と幅が広い。参加者のアンケートには「おしゃれは男女にかかわらず死ぬまで大切だと思う」「おしゃれをすることで生き方まで変わりそう」などの声が寄せられた。

 服部さんは「参加しやすい仕掛けを考えて、地域社会をごちゃまぜにしたい。どうぞお出かけください」と話す。問い合わせは服部さん(080・6652・7017)へ。